近年の進路状況の傾向
2023年5月にコロナ対策が第5類へ移行し規制が大きく変わったことに伴い、今年度の都立高入試では、追々検査が廃止になったり、推薦入試における集団討論を実施する高校が一部あったりと、いくつか変化がありました。また、コロナとは関係ありませんが、最も大きなトピックとしては、男女合同定員としての選抜になったことが挙げられます。その他に、2年目を迎えた英語スピーキングテストもありました。2022年度(令和4)年度の公立中学校卒業生のうち、高等学校などへの進学者は76,303人、進学率は98.4%で依然高い水準で推移しています。都内公立高校全日制への進学率は前年度より0.5ポイント増の51.0%ではありますが、都立離れの現状は昨年同様です。私立高全日制進学率は31.6%で前年度から1.3ポイント減、全日制全体としては87.0%で前年度から0.8ポイント減となりました。その一方、通信制志向は強まっており、前年度から0.6ポイント増の6.1%、進学者計は年によって増減がありますが、それにもかかわらず通信制については実数・割合ともに年々増加しています。全国的に見ても、通信制高校の開校、既存の私立高における通信制課程の新設。既存の通信制高校における通学キャンパスの新設等、通信制高校をめぐる動きは依然活発です。
校長会志望予定調査
都立高校志望者の中では、普通科は志望倍率に大きな変化はありませんでした。工業科は0.79倍で前年度(0.78倍)からわずかですが上がりました。「Next Kogyo START Project」と銘打って工業高校の校名変更や学科改編等、魅力ある学校づくりを進めていますが、現時点で人気回復にはつながっていないようです。商業科は0.91倍で3年連続の倍率アップとなったものの、志望者数が募集人員に達しない状況が9年間続いています。農業科は倍率ダウンで1.0倍台に戻りました。チャレンジスクールは前年度1.25倍→1.23倍ですが、募集人員と志望者数は増えています。都内公立中学校では長期欠席者が14,479人→20,432人→20,986人と増え続けており、不登校等によって能力や適性を活かす機会に恵まれなかった生徒を受け入れるチャレンジスクールの需要が増してきている様子がうかがえます。一橋、浅草などの定時制単位制も0.76倍(前年度0.74倍)にアップしました。都立推薦試験
①出願傾向特別推薦を含む推薦入試の倍率は2.48倍で、過去30年間の中で最低だった前年度(2.47倍)から0.01ポイントアップしました。
集団討論が実施されなくなった2021年度には倍率が上がったものの、それ以外の年度では倍率ダウンが続いています。都立高校第一志望者のうち推薦入試に応募する出願率は47.6%で、この数値は推薦応募倍率が今年度より高かった2020年度より高いので、都立高校の志望率自体の低下が推薦応募倍率の低下につながっているということが分かります。
②高倍率になった高校
普通科でもっとも高い倍率になったのは、三田で5.31倍でした。次いで本所5.21倍、城東4.97倍、豊島4.66倍と続いています。前年度の倍率高順位5校(男子は片倉、小岩、鷺宮、東大和、東村山、女子は鷺宮、西、富士森、小岩、広尾)とは顔ぶれが全く異なる結果となりました。単位制普通科は新宿が7.66倍でトップ、大泉桜の3.73倍が続きました。新宿の7倍超えは7年ぶりです。総合学科では、晴海総合3.30倍、杉並総合2.97倍と続きました。晴海総合は6年連続で応募倍率が増えています。
専門学科では、前年同様総合芸術「美術」が5.46倍でトップ、次いで同校「舞台表現」4.83倍、工芸「グラフィックアーツ」4.70倍、同校「デザイン」4.50倍、園芸「動物」4.20倍と続きました。定員が少ないため、年によって入れ替わりが目立つ専門学科ですが、総合芸術の美術や舞台表現、工芸のデザインは前年度も上位に入っていました。
③推薦合格者の状況
全日制の推薦合格率は39.7%となって前年度(39.7%)と同じ結果になりました。欠席者は72人で前年度(70人)とほぼ同数、コロナ禍の年度と比較すると大幅に減りました。
普通科は34.8%(前年度男子38.0%、女子31.5%)となりました。単位制普通科は33.8%(同35.4%)と微減、工業科68.9%(前年度72.8%)や商業科69.6%(前年度70.1%)は多少ダウンしたものの、推薦入試としては依然として高い合格率を保っています。